KAKEGAWA LB

KAKEGAWA LB

民泊

Lodging

民泊

「かけがわ民泊創業マニュアル」を作成しました

2020年2月19日、静岡県掛川市の大日本報徳社にて開催された「『民泊のすすめ』空き家の問題 解決セミナー」において、かけがわランド・バンクが「かけがわ民泊創業マニュアル」を発表しました。

「かけがわ民泊創業マニュアル」は、掛川市において「これから民泊を始めてみよう」と考えている人向けに作った民泊入門の手引き書です。

マニュアルでは民泊が注目されている背景や、民泊の種類などについて順を追って解説。オリジナルのキャラクターによる会話を通じた解説などの工夫があり、誰でも読みやすい内容になっています。

読者はマニュアル内にある

・民泊比較リスト
・民泊フローチャート
・民泊問診票

などを活用し、自分に合った民泊を選んだり、民泊の準備を進めることが可能です。

「かけがわ民泊創業マニュアル」は下記リンクからダウンロードできます。

ダウンロードはこちら▶︎ かけがわ民泊創業マニュアル

民泊

ブレないゲストハウスの作り方。「どこにもない家」長濱裕作さんインタビュー

掛川駅から南に車で約20分。小道を進んでいくと茶畑の先に見えるのが、築140年の古民家を改装したゲストハウス 「どこにもない家」。運営するのは、フリーランスライターで、コミュニティスペースの運営を行っている長濱裕作(はがはまゆうさく)さん。

12年勤めた会社を辞めて地元にUターンし、2019年8月に「どこにもない家」をオープンしました。

掛川市における農家民宿での開業事例は少なく、必要な情報が未だ得にくい状況です。

今回は民泊やゲストハウス などの開業に関心がある方への参考事例として、「どこにもない家」を運営する長濱裕作(はがはまゆうさく)さんに開業の経緯や思いなどをうかがいました。

〈聞き手=島津健吾

今日死ぬとしたら何に後悔するか?

長年働いた会社を退職してフリーランスになったと聞きました。なぜ退職しようと思ったのでしょうか?

新卒から12年間働いていた会社で、エリア全体を管理する仕事をしていた時のことです。子ども3人と妻を千葉に残して、埼玉に単身赴任することになりました。これをきっかけに、「本当のところ自分は何をしたいのか?」と退職を考え始めました。

子どもが3人いて30歳半ばで退職。奥さんの反応はどうでしたか?

当時、単身赴任していましたので、電話で自分の気持ちを妻に伝えてみることにしました。退職後の予定がはっきりしない中、「田舎で子育てがしたいんだよね」とフワッと伝えたところ、妻が「いいねっ!やろう」と。逆に私が「えー!」とびっくりしたくらいです。

-奥さんのほうが思いっきりいいですね(笑)。「やりたいこと」はぼんやりしていても、「どう生きたいか?」は明確でしたか?

仕事を辞めるタイミングで、今後の生き方について考えることにしました。「今日死ぬとしたら何に後悔するか」と自分に問いかけることで、

  • 家族との時間を持てなかったこと
  • 親孝行ができなかったこと
  • 今までお世話になった人に感謝の気持ちを伝えられなかったこと

という3つの後悔を明確にしました。そこから、「家族との時間」は退職することで作り、「親孝行」するためにUターン。そして、「今までお世話になった人に感謝の気持ちを伝える」ために、ゲストハウスをオープンすることになります。

→詳細はブログ「【どこにもない家の話 その1】僕たちはなぜゲストハウスをやろうと思ったのか」へ。

ゲストハウスの運営は「仕事」という感覚ではない

-退職後すぐにゲストハウスを始めなかったとか?

仕事を辞めてすぐのタイミングで、現在の物件を見つけたのですが、その時は自宅として購入しました。お風呂も広く、囲炉裏もあり、ゲストハウスとしても使えそうだねという話はしていましたが、ゲストハウスを始めることは考えていませんでした。

-そこから、なぜゲストハウスを始めたのでしょうか?

1つは、今までお世話になった人に感謝の気持ちを伝えるには、ゲストハウスがぴったりだと思ったこと。

もう1つは、僕たち自身がおもてなしすることが好きだったからです。実は、Uターンする前から、自宅に友人を招いて、食事を提供したり、宿泊してもらったり、ゲストハウスのようなことをしていました。自宅にゲストをお招きすることは全く苦痛ではなく、むしろ私も妻も楽しんでやっていたくらいです。

でも、ゲストハウスの運営は今やりたいことではなく、この先やりたいことでした。というのも、当時はフリーランスとして駆け出しで、ライターとしての仕事をまずは固めてからゲストハウスを始めたいと考えていたからです。そういう話を妻としたところ、妻は「気持ちはわかるけれど、私は早くやった方がいいと思う」と。ほかにも、実際に宿泊してくれていた知人たちにも、「やったほうがいいよ」と言われ、自分の中の優先順位を変えてすぐに始めることにしました。

自分たちの価値観をベースにゲストハウスを作る

-ゲストハウスを始めるにあたり、コンセプトはどのように決めましたか?

ゲストハウスのキーコンセプトである「時間を取り戻すゲストハウス」は、児童書の『モモ』から発想を得ています(※『モモ』のテーマは時間。不思議な力を持つ少女が時間泥棒に奪われた時間を取り戻すストーリー)。

「どこにもない家」というゲストハウスの名前も、『モモ』に登場する時間を司る家の名前です。

→『モモ』の作者に名前の使用許可をとるまでの詳細はブログで【どこにもない家の話 その2】ゲストハウスの名前の由来は『モモ』から

仕事を辞めるタイミングで再度読み返し、家族、親孝行、お世話になった人への恩返しを最優先事項にしました。つまりは、時間の使い方を見直すきっかけを作ってくれたのが『モモ』なんです。

こうした経緯から、誰にとっても大切な時間を今一度見つめ直せるような、そんな場にしようと、コンセプトを「時間を取り戻すゲストハウス」にしました。

-話を聞いていると、表現したい価値観がはっきりしていることがわかりました。具体的にどのように形にしていきましたか?

「どこにもない家」は私たちが大切にする価値観を根幹に、提供するサービスやものを選んでいます。つまり、「なぜゲストハウスをするのか?」というWhyを基準に、物を選んだり、サービスを提供したりしています。たとえば、ゲストハウスで使っている器や絵などは、私が好きな地元のクリエイターさんから購入しました。

-ビジネス的に考えれば、お皿やコップなどの小物類は100均で購入したほうが初期投資は抑えられそうですよね。

確かにそうかもしれません。でも、仕事を辞めたタイミングで、心から愛せるものに時間とお金を使おうと覚悟を決めました。自分の好きなものに、時間とお金を惜しみなく使っていこうと。それが宿泊していただく人への恩返しなるのではないかと。

まだ全てのものは揃えきれてはいませんが、これからも徐々に自分たちがいいと思うものを揃えていく予定です。

それに、最終的に自分の価値観を大切にすることが、一番の強みになると感じています。Whyから始まる動機は、パーソナルなもの。真似する云々ではなく、その人独自のゲストハウスを作る上で欠かせないものです。

集客、利益、価値観のバランスの取り方

-2019年9月にオープンしてから、集客はどのようにしていますか?Booking.comやAirbnbのようなサイトには登録していますか?

今は、お客様の大半が友人や知人です。2019年のクラウドファンディングで支援してくれた人も宿泊しにきてくれています。Booking.comなどは一切登録していません。

-なぜでしょうか?

ミスマッチを恐れているからだと思います。私たちの想いとしては、ある程度、私たちが提供したいものを理解した上で宿泊して欲しい。予約サイトは多くの人の目に触れるチャンスを生み出してはくれますが、私たちの価値観を伝えるには不十分だと感じています。そこで現在、想いを伝える場所としてどこにもない家のホームページを準備しています。

-自分のペースで着実に進めている感じを受けますが、それはゲストハウス以外にも収入源があるからでしょうか?

それはあると思います。もしゲストハウスしか収入源がなければ、自分たちの価値観はほっといて、できるだけ多くのお客様に高い宿泊費用で泊まっていただくことが最優先事項になっていたはず。複数の収入源があることで、自分たちの価値観を曲げずに進められたと思います。

準備に1年かけたことで地域の価値観を理解できた

-田舎でゲストハウスと聞くと、地域住民から苦情が入ったりしないのか気になりました。地域とうまくやっていくコツはありますか?

確かに、いきなり引越しをしてゲストハウスを始めるのはリスクがあるなと思います。私は、家を購入してからゲストハウスを始めるまで1年ほど期間がありましたが、結果としてよかったなと思っています。その1年間で、地域の人と関わりもできたし、地域が大切にしている価値観を理解する時間に当てられたからです。

また、お客様の数も重要ではないでしょうか。1日に何十人も泊まりに来ていたら苦情が来るかもしれませんが、1日1組だけと決めているので、迷惑をかけるリスクも限りなく少ないと思います。

-準備期間は確かにあったほうがよさそうですね。地域とのコミュニケーションは積極的にとっていますか?

私はできるだけ積極的に取りたいとは思っているのですが、もともとこの地域はコミュニケーションが驚くほど少なかったんです。想像していた田舎のイメージと、ギャップがありました。

そんな中「釜六会」という、昔この地域に存在していた30〜40代が定期的に集まる会を復活させました。一ヶ月に一回、このゲストハウスに地域の人が約10人集まって飲んでいるのですが、普通の自宅を会場として使うとなるとハードルは高いですよね。でも、ゲストハウスは半分パブリックのような場所で、地域の土間的な場所としても活用するにはちょうどいいと感じています。

これからゲストハウスを始める方へ

-ゲストハウスを始めるにあたってのリスクはなんだと思いますか?

私が一番怖いと思うのは、ゲストハウスを始めてみたけれど、自分には合ってなかったと後でわかることです。ゲストハウスの運営というと、「かっこいい」「楽しそう」と思われる部分はあるかもしれませんが、人によっては大変なこともたくさんあります。

お客様のために、食事やお風呂を用意するようなことが苦手だと、始めた後にわかったら大変ですよね。だから、ゲストハウスを始める前に、まずはアルバイトをしてみたり、自宅に友人や知人を招いて宿泊をしてもらったり、リーンスタートアップのように小さく始めることをおすすめします。

長濱さんのTwitterはこちら


かけがわランド・バンクは、掛川市の活性化を目的とした空き家活用を推進しています。

空き家活用は、これからますます重要度が増してくる課題。地域が一体となって課題解決に取り組むことが大切です。

「空き家を活用したい」

「民泊事業に関心がある」

そんな方はぜひ、かけがわランド・バンクまで1度ご連絡くださいませ。

かけがわランド・バンクお問い合わせページ

民泊

地域の人たちと一緒に「あるべき旅行の形」を作りたい。旅ノ舎(たびのや)山田幸一さんインタビュー

2018年にオープンしたばかりの「旅ノ舎(たびのや)」は、掛川市日坂にある農家民宿です。風情ただよう古民家に滞在しながら、お茶摘みなど、季節に応じた里山での暮らしを体験できます。

掛川市における農家民宿での開業事例は少なく、必要な情報が未だ得にくい状況です。
今回は民泊などの開業に関心がある方への参考事例として、「旅ノ舎」を運営する山田幸一(こういち)さんに開業の経緯や思いなどをうかがいました。

〈聞き手=長濱裕作〉

沖縄で「あるべき旅行の形」を目の当たりにしたことから開業を決意

 

−−農家民宿をやることになった経緯について教えていただけますか

私は旅行会社を辞めてから3年間、沖縄で旅行関係の仕事をしていました。そこでは、修学旅行の受け入れを盛んにやっていたんですね。
そこで見た農家民宿の形が、とても面白いと思ったんです。これなら学生だけでなく、一般の旅行客からもきっと喜ばれるだろうなと思いました。

旅行の本質的な部分は「お客さんが何を体験してどう思ったのか」だと思います。

一般的な旅行会社は基本的に、お客さんを契約している施設に送るだけ。送った先でどういうことが行われていて、どういう体験をしているかはほとんど見えていません。
でも沖縄ではそんなことなく、あるべき旅行の形が実現できていました。それを目の当たりにして「自分もそれをしてみたいな」と思ったんです。

−−なぜ日坂という場所を選んだのでしょうか

ここは明治からずっとお茶を作っている方がいて、下の方には日坂の宿場町があり、「東海古道」という万葉の時代からある道も通っています。とてもポテンシャルのある地域なんです。
もちろんお茶の景色が見れたり、お茶摘みができたりする場所は、市内にもいくつかあります。

でも、本物のお茶の産地で、お茶農家さんが自ら対応してくれるところはなかなかありません。ここで体験できるのは本物の体験です。だからきっとお客さんは来てくれると思いました。

また沖縄で仕事をしていた際は単身で暮らしていましたが、静岡に移り、女房と2人で田舎暮らしを楽しんでみたかったこともあります。実際は夏は虫が出たり、冬は寒かったり、なかなか慣れないところもありますが(苦笑)

前職の旅行会社で感じていたギャップ。「付加価値」を知ったうえで届けたい

 

−−勤めていた旅行会社を辞めた理由を教えていただけますか

私は旅行商品を企画して販売するという仕事をしていたんですけれど、当時は商品を作れば、作った分だけ売れていたんですね。
宿の在庫を持っていて、飛行機や新幹線の席を持っている。持っているものが強い時代です。

でも、バブルが弾けたことで物の価値や考え方が変わり、これまでの商品が全然売れなくなりました。その中で生まれてきたのが、その商品ならではの「付加価値」を付けるという考え方です。

「付加価値とは何だろう?」と考えますが、私たち旅行会社の人間は実際の現場を知りません。

それを知ろうにも、相談する相手はホテルや観光施設の営業マン、契約上の関係者しかいないわけです。その人たちも、地元とのつながりが薄い場合が多い。
提供しているものと、旅行者が本当に求めているものとの間には、かなりのギャップがあることを感じていました。だからそれをピンポイントで届けたいと思っていたんです。

地域の受け皿を作り、地域の仲間と一緒に広げていきたい

 

−−どのような農家民宿を目指しているのでしょうか

私は観光的な視点で、この地域にできるだけ足を運ぶ人が増えてくれたらいいなと思っています。
観光においては、人と人とのつながりの中で思い出が残り、そこから「また行きたい」という思いにつながるのではないでしょうか。

なので自分たちも、施設などのハード面でどうこうするのではなく、
「ここ良かったね」
「この料理おいしかったね」
「一緒に案内した農家さん楽しかったね」
そういう思い出をお客様の中にしっかりと残せたらいいなと思いますね。

−−地域での取り組みはどのように進めていく予定ですか

私は開業前から何度も日坂に足を運んでいたんですね。その中で縁あってまちづくり協議会に参加させていただき、今は個人だけでなく組織としても動いています。

加えて倉真で活動している「時ノ寿の森クラブ」とも知り合いました。地域に貴重な観光資源があるといっても、それだけでは観光につながりません。その受け皿となるものを作る必要があります。

地域の組織とつながり、仲間と一緒に活動を広げていくことが大切だと思っています。

地域の人たちにとってプラスになる環境をもっと広げていきたい

 

今、日本の至るところで過疎化が進んでいます。

日坂においても、何もしなかったらお茶は衰退してしまいますし、放棄地が増えていくことでしょう。そうなれば子どもも減り、小学校がなくなってしまいます。それは目に見えていることです。

今見える美しいお茶畑の景色は、お茶農家さんがいて、しっかりと管理してくれているから維持できています。

その景色が維持できているということはどういうことなのか。

自分たちにできるのは景色を楽しんでもらうことだけでなく、お茶農家さんの思いを伝えていくことだと思っています。

−−とても時間がかかりそうな取り組みですね

そうですね。
たとえ時間がかかったとしても、地域に受け皿を作ることで、そこを訪れた人と地域の人たちとの間にコミュニケーションが生まれる。それを通じて地域としての何かが残れば、お客さんにとってはとても良いことだと思います。
受け入れた人たちにとっても、新しい出会いが生まれて、気持ち的にも豊かになるはずです。

私は日坂を1つの拠点として捉えていて、ゆくゆくはもっと広く展開していきたいと考えています。日坂のお茶のように、その地域ごとに代々受け継がれてきたものを大切にしていきたい。

ここで作ったような、地域の人たちにとってプラスになる環境をもっと広げていきたいんです。

まとめ

山田さんは旅行業界での経験を経て、自分が理想とする旅行の形を実現するために農家民宿を開業しました。かつての実態の見えない関わり方とは異なり、今は最初から最後まで、自分たちがゲストと関わります。

地域にある貴重な観光資源を絶やさないこと。
地域との関わりを何よりも大切にすること。

観光客の受け皿づくりに励む山田さんの視点は高く、その軸にあるのは「地域」です。
山田さんが実現したい想いは場所にとらわれることなく、これからもゆっくりと広がっていくことでしょう。

かけがわランド・バンクは、掛川市の活性化を目的とした空き家活用を推進しています。
空き家活用は、これからますます重要度が増してくる課題。地域が一体となって課題解決に取り組むことが大切です。
「空き家を活用したい」
「民泊事業に関心がある」
そんな方はぜひ、かけがわランド・バンクまで1度ご連絡くださいませ。

かけがわランド・バンクお問い合わせページ

 

〈文・写真=長濱裕作〉